アコースティック ギター




アコースティックギターは、電気を使わずに弦の振動をボディで共鳴させて音を出すギターです。その温かく豊かな響きから、弾き語りやソロ演奏、様々なジャンルの音楽で幅広く愛されています。

歴史

アコースティックギターのルーツは非常に古く、紀元前の弦楽器にまで遡るとされています。現代のアコースティックギターの直接の祖先は、15世紀のスペインに登場したビウエラと言われています。そして、現在広く使われているスチール弦のアコースティックギターを最初に作ったのは、ドイツ生まれでアメリカに渡ったクリスチャン・フレデリック・マーティン(1796~1867)だとされています。

種類と特徴

アコースティックギターには、いくつかの主要な種類があり、それぞれ音色や演奏性に特徴があります。

  • フォークギター(スチール弦アコースティックギター): 一般的に「アコギ」と呼ばれるのはこのタイプです。金属製のスチール弦を使用し、ジャリンとしたきらびやかな音色が特徴です。弾き語り、ソロギター、ブルース、ブルーグラスなど幅広いジャンルで使われます。
    • ドレッドノートタイプ: 最も標準的なサイズで、くびれが浅い大きめのボディが特徴です。迫力のある低音とバランスの良いサウンドで、ストローク(かき鳴らし)にもフィンガーピッキングにも適しています。
    • フォークタイプ(OOO/トリプルオー、OMなど): ドレッドノートより小ぶりで、くびれが深いボディが特徴です。抱えやすく、繊細な音色を出すのに適しており、フィンガーピッキングによく用いられます。
    • ジャンボタイプ: ギブソンに代表される、非常に大きなボディを持つタイプです。ボディ容積が大きく、広がりのある豊かなサウンドが魅力です。
  • クラシックギター(ガットギター): ナイロン弦を使用し、暖かくまろやかな音色が特徴です。フォークギターよりもネックが広く、主に指で弾きます。クラシック音楽だけでなく、ポップスやボサノバなどでも使用されます。
  • エレアコ(エレクトリックアコースティックギター): アコースティックギターにピックアップ(マイク)が搭載されており、アンプに繋いで音を増幅させることができます。ライブ会場やレコーディングなど、大音量が必要な場面で活躍しますが、アンプに繋がなくても生音で演奏できます。

ボディの木材 アコースティックギターのサウンドは、使用されている木材によって大きく変化します。

  • 表板(トップ): スプルース(シトカ・スプルース、イングルマン・スプルース、ジャーマン・スプルースなど)やレッド・セダーがよく使われます。音の響きに最も重要な部分です。
  • 側板(サイド)&裏板(バック): ローズウッドやマホガニーが代表的です。
    • ローズウッド: 深みがあり力強い音色。
    • マホガニー: 繊細で優しい音色。

構造

アコースティックギターは、主に以下のパーツで構成されています。

  • ヘッド: 弦を巻きつけるペグが取り付けられている部分。
  • ペグ(糸巻): 弦を巻き付け、音程を調整する部品。
  • ナット(上駒): ネックの先端にあり、弦の振動の始点となるパーツ。
  • ネック(棹): 左手でコードを押さえる部分。
  • フィンガーボード/指板: ネックの表側にある、フレットが打ち込まれた板。
  • フレット: 指板に打ち込まれた金属の棒で、音程を決める役割を果たす。
  • ボディ: 空洞になっており、弦の振動を共鳴させて音を増幅させる部分。表板(トップ)、側板(サイド)、裏板(バック)からなる。
  • サウンドホール: ボディの表板に開けられた穴で、ここから音が放出される。
  • ブリッジ: ボディの表板に接着され、弦を固定するパーツ。
  • サドル(下駒枕): ブリッジの上に乗っており、弦の振動の終点となるパーツ。
  • ストリングピン(弦止めピン): ブリッジに弦を固定するためのピン。
  • : スチール製またはナイロン製で、振動によって音を出す。細い方から1弦~6弦と呼ばれる。

弦をはじくと、その振動がブリッジから表板全体に伝わり共鳴し、さらに側板や裏板、ボディ内部の空気も共鳴することで、サウンドホールから音が大きく響き渡る仕組みになっています。

選び方

アコースティックギターを選ぶ際は、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。

  • サイズと抱えやすさ: 特に初心者の方は、ご自身の体格に合った抱えやすいサイズを選ぶことが重要です。ドレッドノートは標準的ですが、小柄な方にはフォークタイプがおすすめです。
  • 音色と音量: 使用されている木材やボディの形状によって音色は大きく変わります。店頭で実際に音を出し、好みの音色を見つけましょう。
  • 単板か合板か:
    • 単板: 1枚の木材から作られており、音の響きが良く、弾き込むほどに音が成長すると言われています。価格は高めです。
    • 合板: 複数の木材を貼り合わせて作られており、価格は抑えられます。
    • トップ単板: 表板のみ単板で、他の部分は合板のモデルもあります。価格と響きのバランスが良い選択肢です。
  • 弾きやすさ: ネックの握りやすさや弦高(弦とフレットの間の高さ)も重要です。弦高が低い方が押さえやすく、初心者にはおすすめです。
  • 予算: 初心者向けの比較的手頃なモデルから、プロ仕様の高級モデルまで幅広い価格帯があります。

メンテナンス

アコースティックギターは木材でできているため、適切なメンテナンスが長持ちの秘訣です。

  • 日常のお手入れ:
    • 演奏後は、ギター専用のクロスで汗や脂を拭き取る。
    • 弦は定期的に交換する(毎日演奏するなら1ヶ月に1度、そうでなくても3ヶ月に1度程度が目安)。
    • 弦交換の際に、指板にレモンオイルやオレンジオイルを塗って保湿する。
  • 保管環境:
    • 温度20~25度、湿度40~60%程度が理想とされています。
    • 直射日光やエアコンの風が直接当たる場所は避ける。
    • 極端な乾燥や湿気を避ける。

有名メーカー

アコースティックギターの有名メーカーは数多くありますが、代表的なものとしては以下が挙げられます。

  • Martin(マーティン): アコースティックギターの代名詞とも言える老舗メーカー。繊細で艶のある音色が特徴。
  • Gibson(ギブソン): ロックミュージックとの相性が良く、迫力のあるサウンドが魅力。「J-45」などが有名。
  • YAMAHA(ヤマハ): 国内外で高い評価を得ている日本のメーカー。初心者向けからプロ向けまで幅広いモデルを展開。
  • Taylor(テイラー): コンピューター設計・製造により品質が安定していることで知られる。
  • Morris(モーリス): 日本の老舗メーカーで、フォークブームを支えたブランドの一つ。
  • Takamine(タカミネ): エレアコに定評のある日本のメーカー。

アコースティックギターは、その生音の温かさと表現力の豊かさから、多くの人々に愛され続けている楽器です。


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